自社が他社から継続的に商品を購入するにあたって、取引基本契約(売買)を締結した場合に、トラブルにつながることが多い規定について、トラブルを避けるためにはどのような対応が必要なのか、解説します。
目次
「契約不適合責任」に関する条文について
買主は、購入した商品に契約不適合(品質等に問題があること)があった場合、通常は修補や代替品の引渡しなどを求めることができます。そして、売主がこのような責任を負う期間は、契約で定められていることが多いです。
また、この期間の定めがない場合、事業者間の契約では、商法に従って商品の受領後6か月間が責任を負う期間です。しかし、契約でこの期間が短く設定されることもあり、その場合には特に注意が必要です。
そこで、「契約不適合責任」に関する条文の中で責任を負う期間が定められている場合には、以下に記載する対応をとることが考えられます。
注意すべき規定 | 必要な対応 |
売主が契約不適合責任を負う期間が定められている | この場合、契約書に定められている期間が経過すると、それ以降は売主に対して契約不適合責任を追及することができなくなります。
そのため、責任を負う期間が終了する前に、余裕をもってあらためて商品の動作確認等を行い、商品に問題がないか(契約不適合がないか)を入念に確認することが考えられます。
期間が経過した後は、修補や代替品の引渡しなどを求めようとすると、売主から追加費用を求められるおそれがあります。 |
「目的物検査時のみなし合格」に関する条文
買主としては、購入した商品について検査の期限が設定されており、かつ、期限までに通知がなかったときは合格したものとみなす旨の規定がある場合、検査期限までに検査を終えて売主に通知しないと、検査に合格したものとして扱われ、修理や交換を求めることができなくなります。
これを防ぐため、「目的物の検査」に関する条文について、次のような規定が含まれている場合には、以下に記載する対応をとることが考えられます。
注意すべき規定 | 必要な対応 |
期限までに検査結果を通知しないと、合格したものとみなす旨が定められている | この場合、契約書に定められている期限までに検査を完了して売主に不合格である旨を通知しないと、その後になって商品に問題があることを発見しても修理や交換を求めることはできません。
そのため、各取引先との関係で、検査期限がどのように設定されているかや、それに合致した検査体制を構築できているかについて、定期的に確認するのが望ましいです。 |
「損害賠償」に関する条文
買主としては、売主に対して請求できる損害賠償の範囲が限定されていると、売主が契約の内容に違反した場合であっても、十分な責任を取ってもらえないことがあります。
これを防ぐため、「損害賠償」に関する条文について、次のような規定が含まれている場合、以下に記載している対応をとる必要があります。
注意すべき規定 | 必要な対応 |
売主に請求できる損害賠償額に上限が定められている | この場合、上限額を超える被害を被ったときに、上限を超える金額については損害の賠償を請求できません。
そのため、例えば売主から買い受けた商品を他社に販売しようとするときは、その販売先との契約においても損害賠償の範囲に上限を設定し、自社が損害を負担することがないように注意する必要があります。 |
「通知義務」に関する条文
取引基本契約などの継続的契約においては、会社の商号や所在地が変更した場合や、合併等により組織が大きく変更した場合などに、相手方に通知する義務が規定されていることがあります。
このような通知を怠った場合も、契約違反となるため、「通知義務」に関する条文が定められている場合、以下に記載する対応をとる必要があります。
注意すべき規定 | 必要な対応 |
一定の事項について通知義務が定められている | この場合、通知義務を負っている事項が生じたにもかかわらず通知を怠ると、契約違反となり、売主からの信頼を失った結果、契約を解除される可能性があります。 特に合併、買収、事業承継等の組織・資本構成の変更は、売主への影響が大きいため、通知を怠った場合には、売主からの信頼を失う可能性が高いといえます。
そのため、各取引先との関係で、どのような場合に通知義務を負っているのか、定期的に確認するのが望ましいです。 |